原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 忌々しそうにミシェルがふたりを見て呟いた。
 彼女の言う通り、楽しそうに笑いながら手を繋いで歩くふたりは、恋人同士以外の何者にも見えなかった。


 平民である王都民の祭りに紛れるように、普段
よりシンプルな服装のふたりだったが、それでもやはり滲み出る貴族の雰囲気は隠せていなかったので、彼等の周囲にだけ少し間が空いていた。


 通りすぎた後も振り返って見ている者達も居る。
 良い意味でも悪い意味でも目立ち過ぎる、お互いしか見えていない美しいふたりだった。


 夜に体調が悪いはずのオスカーを連れていく、と言われていたが。
 遠くからだが、彼はロザリンドと居て絶好調に見えた。

 事情が変わってきたのかも?とウェズリーは広場を横切ってふたりの方へ歩き始めた。

 その時、彼等の後を歩いている男の存在に気付いた。
 一定の間隔を空けているのか、ふたりが立ち止まって露店を覗いていると、男の歩みも止まっていた。


 男の雰囲気からは祭りを楽しんでいる様子は伺えず、何らかの目的があってコルテス兄妹の後をつけているのが見て取れた。
 背が高くがっしりとした体格の、黒髪短髪の男だ。

 何故だか良くない予感がした。
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