原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 大きな怪我を負わなかったのはカーネル・オルコットがかけた保護魔法のお陰だった。
 弟を殺していたかもしれない悪夢に、今もダンカンは苦しんでいる。



 決して仲が悪かったわけではない。
 幼い頃から一緒に遊んでいた兄弟だった。
『似てない兄弟』と、からかわれた時は相手にやり返してくれた兄だった。



 オスカーは俯いて、無言で何度も頷いた。


「……えー、取り敢えず冷めるから、これいただきますね」


 その場に流れていた一種ピリピリした緊張感がその声で緩んで。

 気を遣って料理に手を伸ばし始めたウェズリーに、ロザリンドは感謝の目を向けた。


 ◇◇◇


 義父の借金のかたにアラカーンの商人(決して
デブとは言わない) に第5夫人として売られてしまうのだ、と涙ながらに語るミシェルに、その場でダンカンは跪いてプロポーズをした。


 そうなることを目論んでいたのに、思いがけない求婚に戸惑いながらも受け入れるピュアな乙女をミシェルは見事に演じきった。
 他の3人はいささか白けた表情で、それを祝福した。
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