これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
渡された婚約指輪は、私の左手薬指のサイズピッタリだった。
あとで母から、正式に結婚の申し込みがあったときに、私には内緒で指輪のサイズを教えてくれと言われていたと聞いて納得したけれど、それを聞くまで何で徹也くんが私の指のサイズを知っているのか不思議でならなかった。

「だって、会食中は親が今後のことをずっと話してるんだよ? 結婚式の日取りや会場も、全部親が決めちゃうし。これでいいよね? って、ノーって言わせない空気なんだよ。私はそんなもんわからないから、『お任せします』って丸投げしちゃったし……」

私の言葉に、弘樹は半ば呆れ気味だ。

「いや、てかさ、結婚するんだよ? 左手に指輪してる男と。わかってる? もしかしたらあんた、現在進行形でほかに女がいるかも知れないんだよ? 結婚後に浮気されるかも知れないんだよ? そこんとこよく考えな?」

弘樹の言葉に頭を悩ませてしまう。
私よりも三歳年上の徹也くんは三十一歳。イケメンで御曹司とくれば、黙っていてもモテるだろう。
三次元にはほぼ興味のない私だけど、徹也くんはカッコいい部類だと思う。
対する私はちびっ子童顔で、素顔だと中学生に間違われることもある。一緒に並んだところで兄妹、下手したら親戚の子くらいにしか見られない。
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