これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
お見合いをしたとはいえ、好きだと告白をされたわけでもないし、デートも数回したけれど、果たしてあれをデートと言っていいものか。結納を交わしたとはいえ、小さい頃からの知り合いで恋愛感情も生まれていない状態なのだ、婚約者だと言われても今一つピンとこない。

私が黙り込んでしまったので、弘樹は焼酎の入ったグラスに手を伸ばした。
焼酎を口に流し込むと、グラスの中の氷と弘樹の喉が音を立てる。

「相手が幼馴染なら、晶紀がどんな人間かは理解した上で婚約に踏み切ったわけだろう? 向こうも、晶紀は遊びで付き合うような女じゃないのはわかってると思うけど、何かあったら俺に言いなよ? 話だけなら聞けるからさ」

思いがけない弘樹の優しい言葉に、私は嬉しくなった。
何だかんだ言いながらも、弘樹は私のことを心配してくれている。
弘樹には私の性癖がバレているから、こうして気兼ねなく何でも話ができるけれど、果たして私がお腐れさまだと徹也くんが知ったら、どう思うだろう。そして、私の部屋に置いている肌色いっぱいの本を見たら、どのような反応をするか……
弘樹の言葉に私が素直に頷いたそのときだった。

「あれ? 晶紀?」

背後から聞こえる声にとっさに振り返ると、そこには、昨日結納を交わし晴れて婚約者となった徹也くんと、見知らぬ綺麗な女性が一緒にいた。
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