これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
「指輪……か……」

無意識に呟く言葉に、虚しさが募る。
婚約指輪は傷つけないように、指輪を専用の箱に入れて、机の上に置いている。
アクセサリーの類は冠婚葬祭用で使うからと、真珠のネックレスとイヤリングのセットくらいしか持っていない。
そのセットも、購入したときに入っていた専用の箱にしまっているから、ジュエリーボックスなんてない。

そういえば昔、私が中学校の修学旅行で京都に行ったとき、自由行動中に新京極かどこかでおもちゃの指輪を買ったよな。あれ、どこにしまい込んだっけ……

親指のサイズに合わせて買ったから、他の指のサイズよりも大きくて、ブカブカなそれを失くさないように大切にしてたんだけど。
指輪を購入時、お店の人からサービスで「名前を彫ってあげる」って言われて彫ってもらったから、もし誰かが拾っても私のものだとわかるはずだった。
修学旅行から戻ってきて、それから……

寝る支度を整えて、私はベッドへと移動した。
肌に触れるシーツの冷たさが心地よい。
弘樹と一緒に飲んだお酒の酔いも手伝って、いつの間にか眠ってしまっていた。
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