これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
   * * *

ここはどこだろう。
活気あふれたアーケード街に、修学旅行生と思われる色々な制服を着用した学生たちが行き交っている。
私は自分が中学の頃着用していた制服を身に纏っていることに気づいた。

……ああ、これは夢だ。
不思議なことに意識は現在(いま)のままだけど、中学生の頃に戻っているようだ。多分寝る前に昔買った指輪のことを考えていたからだろう。
夢とわかればと、私はそれに意識を集中させる。

私の身長は、小学校高学年で成長が止まってしまい、現在とほとんど変わっていない。
あの当時、もう少しくらい伸びるのではと信じて疑わなかった私は、中学校を卒業するその日まで、毎日牛乳をがぶ飲みしていた。そしてお腹を下し、お腹の調子が戻ったら再び牛乳がぶ飲みしてお腹を下すという、私の数ある黒歴史の一つだ。

周りに友達は見当たらない。近くにあるお店の中を覗いているか、私が迷子になったかのどちらかで、記憶はあやふやだ。
まぁ、夢だし気にすることないや。
私はマイペースに、辺りをキョロキョロしながら歩いている。
そして……

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