これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
中学英語の復習しない? と、徹也くんの家に押し掛けた。あわよくば全部やってもらおうと企んでいたけれど、その考えは甘く、徹也くんが一日かけて教えてくれ宿題を仕上げたのだった。

「あの日、部屋に晶紀がお守り落として帰って、中に指輪が入ってたことに気づいたんだ」

ここで一息吐いて、徹也くんが言葉を続けた。

「誰かからのプレゼントかと思ったら無性に腹が立ったから、僕のお守りとすり替えて、後日『部屋に落ちてた』って渡したんだけど。指輪が無くなってることに晶紀は全然気づいてなかったみたいで、何も言ってこなかったな」

徹也くんの言葉に、あやふやだった記憶が甦る。
当時の私は指輪を購入したことに満足して、存在をすっかり忘れていたから、お守りを返してもらった時も、中身の確認なんてしなかった。

「何となく指に着けてみたら、サイズがピッタリでさ。大学で地元を離れてからは、晶紀を身近に感じられると思って片時も外さなかった」

まさかずっと使っていただなんて……

「女の子に言い寄られたときは、内側に晶紀の名前が彫ってあるから『彼女からのプレゼント』って言って断るのにも重宝したよ。慎太郎がそれを見て、女装するときに僕をエスコートさせるものだから、慎太郎が僕の彼女って噂も流れたけど、お互いWINWINだからって放置してた」

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