これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
徹也くんから渡された指輪は、メッキが剥がれて傷もたくさん付いているけど、長年大事に使ってくれていたことが伝わった。

「女性は婚約指輪をすれば、他の男からちょっかいを出されなくて済むと思ってたけど、白石くんは例外みたいだな」

上目遣いで私を見つめている。
徹也くんのこんな表情、今まで見たことない。
これじゃまるで、本当に私のことが好きだと言ってるみたいだ……

今ここであのことをカミングアウトしたら、徹也くんは受け入れてくれるのか、一か八か賭けてみることにした。

「違うの! 弘樹は……お互いの秘密を知ってる仲間なの」

「仲間……?」

「うん……弘樹の秘密は話せないけど、私……実は腐ってるほうの腐女子なの」

私のミジンコ並みに小さな勇気を振り絞った一世一代の告白は、沈黙の後、意外な結末を迎えることとなった。

「そんなこと……昔から知ってたよ。うちのおかん、久子おばさんから晶紀の本、借りて読んでるぞ」

その言葉に、私の頭の中は真っ白になった。

「……なんですと?」

「もう一つ付け加えると、今日、晶紀がうちに持ってきたのも、久子おばさんがチョイスした晶紀の本だ。……俺的には男同士のイチャイチャは受け付けないんだけど、あれの受けを晶紀に、攻めを俺に置き換えて、実際にあんなことやってみる?」

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