ラスボス聖女に転生してしまいました~婚約破棄され破滅する運命なので、生き延びるため隣国で錬金術を極めます~
「落ち着いたところで、甘いものでもいかがです?」
「甘いもの?」
「ええ、美味しいケーキがあるんです。甘いものはお嫌いですか?」
「い、いえ、大好きです! あっ!」
しまった。よくわからないうちに本音が口からポロッと出てしまった。
ハーブティーのおかげだろうか。気分が落ち着いて張り詰めた緊張がなくなってきた。
「ゼルナーさん。冷蔵しているケーキをリルアさんに出してあげてください」
「かしこまりました」
レオンハルト様が声をかけると食堂の扉の外から返事がかえってくる。
さすがは錬金公爵の屋敷だ。どうやら冷蔵庫まであるらしい。
ゼルナーさんという方はおそらくこの屋敷の執事さんのことだろう。
「ゼルナーさんは我が家に父の代から仕える執事です。彼には僕が幼少の頃よりお世話になっていましてね」
「へぇー、そうなんですか」
それからしばらくの間、ゼルナーさんがケーキを持ってくるまで私とレオンハルト様は当たり障りのない世間話をした。
レオンハルト様は自分の少年時代に父親に怒られた話や先日珍しい茶葉を手に入れた話を面白おかしく話すものだから、私もついつい立場を忘れて笑ってしまう。
こうして笑いながら会話したのも妹のシェリアと話した以来だった。
◆
「お待たせいたしました。ショートケーキでございます」
「どうも、ありがとう」
「ありがとうございます」
白髪のオールバックの執事、ゼルナーさんがショートケーキを運んできた。
あっ! いちごがのってる。美味しそう~!
そうなんだよね。この世界は一見、中世のヨーロッパみたいな感じなんだけど食文化もかなり発達しているんだよね。
前世の記憶がなかった頃は違和感がなかったけど、下手にゲームの記憶やら日本にいた頃の記憶が混ざると、ショートケーキがあることにも新鮮な驚きを感じる。
「ほう。リルアさんはいちごは最後までとっておくタイプですか」
「えっ? あ、その。好きなものは最後まで残しておくんです。すみません、聖女なのにはしたないですよね?」
「ああ、いや失敬。そういうつもりではなかったのです。僕もいちごは好きですがつい最初に食べてしまうので」
「あっ! そうなんですか。妹も同じタイプです。あの子ったらなにが起こるかわからないからって、いつも好きなものから食べて――」
「甘いもの?」
「ええ、美味しいケーキがあるんです。甘いものはお嫌いですか?」
「い、いえ、大好きです! あっ!」
しまった。よくわからないうちに本音が口からポロッと出てしまった。
ハーブティーのおかげだろうか。気分が落ち着いて張り詰めた緊張がなくなってきた。
「ゼルナーさん。冷蔵しているケーキをリルアさんに出してあげてください」
「かしこまりました」
レオンハルト様が声をかけると食堂の扉の外から返事がかえってくる。
さすがは錬金公爵の屋敷だ。どうやら冷蔵庫まであるらしい。
ゼルナーさんという方はおそらくこの屋敷の執事さんのことだろう。
「ゼルナーさんは我が家に父の代から仕える執事です。彼には僕が幼少の頃よりお世話になっていましてね」
「へぇー、そうなんですか」
それからしばらくの間、ゼルナーさんがケーキを持ってくるまで私とレオンハルト様は当たり障りのない世間話をした。
レオンハルト様は自分の少年時代に父親に怒られた話や先日珍しい茶葉を手に入れた話を面白おかしく話すものだから、私もついつい立場を忘れて笑ってしまう。
こうして笑いながら会話したのも妹のシェリアと話した以来だった。
◆
「お待たせいたしました。ショートケーキでございます」
「どうも、ありがとう」
「ありがとうございます」
白髪のオールバックの執事、ゼルナーさんがショートケーキを運んできた。
あっ! いちごがのってる。美味しそう~!
そうなんだよね。この世界は一見、中世のヨーロッパみたいな感じなんだけど食文化もかなり発達しているんだよね。
前世の記憶がなかった頃は違和感がなかったけど、下手にゲームの記憶やら日本にいた頃の記憶が混ざると、ショートケーキがあることにも新鮮な驚きを感じる。
「ほう。リルアさんはいちごは最後までとっておくタイプですか」
「えっ? あ、その。好きなものは最後まで残しておくんです。すみません、聖女なのにはしたないですよね?」
「ああ、いや失敬。そういうつもりではなかったのです。僕もいちごは好きですがつい最初に食べてしまうので」
「あっ! そうなんですか。妹も同じタイプです。あの子ったらなにが起こるかわからないからって、いつも好きなものから食べて――」