ラスボス聖女に転生してしまいました~婚約破棄され破滅する運命なので、生き延びるため隣国で錬金術を極めます~
 思えばエルドラド殿下に殺されそうになったときもまた私は泣いてしまっていた。

 でも、この涙はあのときとは違う。すべてを受け入れてもらって安心したから泣いているのだ。

「辛かったですね。どれほどの絶望があなたの心を締め付けていたのかと想像すると同情を禁じ得ません。……どうぞ、これで涙をお拭きなさい」

「す、すみません。なんだか感情が(たか)ぶってしまって」

 涙を拭くようにハンカチを渡された私はなんだかとっても恥ずかしくなった。

 今日お会いしたばかりの男性の前で泣いてしまうなんて、聖女でなくてもやらかしてはならないことだと思う。

「あなたが転生者であることは幸運でした。それだけで僕はゲームとやらの僕とは違うはずです。安心なさい。あなたを死なせやしません」

 どうしてこの方は私の話を簡単に受け入れて、その上でこんなにも自信に満ち溢れた表情を見せるのだろう。

 そもそも私が転生したという話から信じがたいことだというのに。

 レオンハルト様はもうすでに私によるゲーム知識を前提にしてどうにかする方法を考えている。

「魔王とやらはあなたの仰るとおり僕の想定を(はる)かに超えて厄介な力の持ち主なのでしょう。ですが、それをわかっただけで僕はかなり有利になったと考えています」

「そういうものでしょうか?」

「ええ、そういうものです。未来の情報というアドバンテージはあなたが思っている以上に大きい。……ですから今日はもうおやすみなさい。ゆっくりと睡眠を取って、あとは明日以降に話しましょう」

「わかりました。……ふわぁ、あっ! すみません」

 その言葉に安心したのか私は急激な睡魔に襲われた。

 レオンハルト様の仰るとおりこれ以上はもうなにも考えられないかも。

 というわけで、ティータイムはここで終わりを告げ、私は彼の勧めに従ってゆっくりと体を休めることにする。

 これがアルゲニアの錬金公爵レオンハルト・オーレンハイムとのファーストコンタクトであった。
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