ラスボス聖女に転生してしまいました~婚約破棄され破滅する運命なので、生き延びるため隣国で錬金術を極めます~
 そしてこの世界がそのゲームの世界に酷似しており、私が魔王に覚醒するというシナリオのもとで動いている。そんな普通なら信じてもらえないであろうことも包み隠さず伝えてみたのである。

「ゲームのシナリオだとレオンハルト様は魔王となったリルアに殺されます。そしてそのリルアは愛する妹に殺されるのです」

「…………」

「私は誰も殺したくありません。このまま魔王になって多くの方に被害が及ぶくらいなら死んだほうがマシです」

 どこまで理解してもらえたのかわからない。

 でも話さずにはいられなかった。話しだしたら止まらなかった。

 私は魔王なんかになりたくないし、そのせいで誰かが死ぬのは耐えられない。

 状況だけでなく心のうちまで話すのは気が引けたが我慢ができなかった。

「リルアさん、あなたの主張は大体わかりました。……ですが一点だけわからないことがあります」

「一つだけ、ですか?」

 ええーっと、かなりヘンテコなことを言った自覚はあるんだけど、わからないのは一つだけなの?

 だってそれは裏を返せばその一点を除いたらわかったということでしょ。

 私からするとそれこそ摩訶(まか)不思議な話である。

「リルアさん、あなたご自分の身がどうなろうと誰も殺したくないというその心意気はご立派です。ですが本当のところ、どうなんですか? 死んだほうがマシと仰りましたが、それは本心でしょうか?」

「そ、それは……、その」

「僕はこの話を口外するつもりはありません。これは内緒話です。僕を信頼してこの話をしてくれたと思うのですが、もう一歩進んで本音を聞かせていただきたい」

 レオンハルト様は眼鏡を外してまっすぐにその眼差しをこちらに向ける。

 彼のそのアイスブルーの瞳は私の心中をすべて見抜いているような気がして、私は自然に言葉が出てしまった。

「……たくない! 本当は死にたくない……! 死にたく、ありません!」

 そうだ。どう小難しく理屈をこねくりまわしても、私は生きたいのだ。

 身勝手極まりない聖女失格の主張かもしれないが、生への執着(しゅうちゃく)はどうしても捨てられなかった。

「それでいい。いえ、それが人としてのあるべき姿です」

「レオンハルト、様……。ぐすっ、すみません……、その、私は……」

 また涙が出てしまった。
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