嘘も孤独も全部まとめて
「行くぞ」


「え…。エレベーターないの?」


男が向かったのは階段。

エントランスのどこを見回してもエレベータが見当たらない。


「たかだか三階くらい、エレベーターがなくて文句言うな」


「…文句じゃないし」


一瞬怒られるかと身構えたものの、この男は何もしてこないと思ったので思ったことを素直に言うことができた。


「…しんど…」


「体力なさ過ぎだろ。若いのにこれぐらいでピーピー言ってんじゃねーよ」


「うっせーな。若くったって何だって、しんどいもんはしんどいんだよ」


部屋の前に着く頃には、息が上がって足がガクガクになっていた。
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