地味子なのに突然聖女にされたら、闇堕ち中の王子様が迎えにきました
 

 
 完全に自我を失い、ふっと精悍な顔から表情が消える。だけど、目だけは金色の光を失っていない。

 強い力に惹きつけられるまま、少女の唇へ口付けた。下唇に何度も噛んで血が出た跡がある。その血を貪るように、小さな口の奥で縮こまっていた舌を捕らえて中を蹂躙する。


 突然のことにパニックになるイヴ。口付けなんてもちろん経験がない。しかもこんな深く激しいものなんて、こういったキスもあるということさえ知らなかった。

 されるがまま口を捕らえられて上手に鼻で息ができず、苦しさから生理的な涙が止まらなくなる。

 非力な手で、厚い胸板を押したり叩いたりしてみるもビクともしない。息が限界で「ンーー…っ」と、精一杯のなけなしの力で胸板を押しやると、一瞬、顔が離れた。


「んっ、あ、やっ」


 鋭い眼光で見下ろされる。まるで野獣のような捕食者のような目。獲物を食べている最中を邪魔されて怒ってるような目だ。そして、邪魔だと言わんばかりに乱暴にメガネを取り払われてしまった。

 怖い、すごく怖い。涙がまた込み上げてきて止まらない。恐怖で声も出せず、両手で顔を覆って泣きじゃくる。

 その両の手を強引に顔から引き剥がされ、床に押しつけられる。懸命に逃れようとするが、力で敵うはずもなくなんの抵抗もできないまま、捕らえられてしまった。


「も、いや、や、おねが」

 やっと出た言葉も、彼の口で塞がれてしまう。


「ーーんん…っ」

 メガネがなくなってより深くなる口付け。頭がクラクラする。こんなの初めてなのに、怖いのに、……怖くなきゃいけないはずなのに、何かおかしい。

 体がすごく熱くて、ある部分がすごく疼いて仕方がない。すごく、痒いところを掻きたいようなそんな感覚。
 両膝の頭同士を擦り付け、足をもじもじさせながら、ソコに触れたい衝動を耐えた。

 
……ソコに触れたら、どうなるの?


 すごく、いけないことのような気がする。

 お願い、だめ。

 これ以上続けられたら、本当におかしくなっちゃう。



 
 まるで、眠りから醒めたようだった。
 一瞬、途絶えた意識が戻ると、この国へ来てからずっと重怠かった体が軽くなっていた。

 それどころか、体の中でどんどん増幅する力、待っていましたと言わんばかりに全身の細胞が、血が、湧いて、彼女の血を歓迎している。

 彼女の方も同じ感覚だったようで、ただされるがままだったのに、自分の口内の唾液を啜ろうとする。
 いつの間にか、彼女の藍色の瞳が赤紫へ変わっていた。

 意識がぼんやりしているのか惚けているのか、こくんと喉仏を上下させたのを最後に彼女は眠るように目を閉じた。
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