地味子なのに突然聖女にされたら、闇堕ち中の王子様が迎えにきました
いちゃつくだけではなく、風呂の中で始めようとしていることに気付くと潤んだ瞳で恨むような目つきで睨まれた。あぁ、ほんと可愛くてたまらない。
だけど、何度こうして抱いても、まるで自分のものになった気がしない。そんな虚無感に、時々むなしくなる。
自分を置いて簡単に遠くへ、永遠に会えなくなるところまで行こうとする彼女をどうしたら繋ぎ止められるか。
なんで、まだこうやって体を重ねるかって、
あの頃と変わらず、性懲りも無く、ただ自分に守られるだけの女になって欲しいからなんだろう。
彼女を繋ぎ止める術はもうそれしか知らないから。
グレン、グレン
情事の時だけ聞ける切羽詰まった、自分を呼ぶ彼女の声。自分のために命を賭けて戦う、なんて言わせるためにお前をここへ連れてきたんじゃないのに。
この甘い嬌声を他の男が聞けるとしたら、この痴態を見られるなら、想像しただけで嫉妬で狂いそうになる。
対面して繋がっている余裕のなさそうな彼女の髪の毛をかき上げて、一層深く繋がろうとすると、たまらず高い声が漏れた。
これだけ愛しく想っていても、俺は、彼女が死んでもあとを追ってやれない。
だから、自分のために死ぬなんて言ってくれるな、お前以上に俺の方が必要なんだ。
ジゼルという存在が。
ただそばに居て欲しい。危険や不幸から一番遠いところで、ただ俺の隣でずっと笑っていて欲しい。
だけど、ジゼルはそれを願わない。
2人の気持ちは平行線だった。お互いを強く想い合っているのは変わらないのに。
そのどうしようもなさがもどかしくて辛くて、こうやって体を好きにして良い時に大事にしたいのに、それをついぶつけてしまう。
泣かせてごめん。手で彼女の涙を拭いながら、唇を奪った。
どうしたら、大人しく、ただの俺の女になると言ってくれる。
「まだ終わらないの?」
「お前が、俺のただのお嫁さんになるって言うなら、ここで終わるよ」
「……何それ、冗談きつい」
冗談な訳あるか、本気だ。
「……ここに、俺の子を孕んだら、お前も易々と死ぬなんて口にできなくなるだろうな」
「だ、だめ、グレン」
本気で狼狽える彼女につい笑ってしまうと、きっと睨みつけられた。
本当に、子どもを宿してしまえば全て解決するのに。
そしたら、ジゼルは俺のために死ねなくなるし、戦場に出なくて良くなるし、ずっと城の中で大事に囲われることになる。
それの一体、何が不満なんだ。
「グレン、だめ、やめて」
「何が?」
「あなたを、守れなくなったら、私もう生きてる意味ない」
そんなのは分かってるよ。お前は、子どもができても絶対喜ばないんだろう。自分の使命が果たせないと、泣いて暮らすことになるのが目に浮かぶ。
でも、こいつ自身を失う位なら、まだマシだと思ってしまうのは自分勝手過ぎるだろうか。