地味子なのに突然聖女にされたら、闇堕ち中の王子様が迎えにきました
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ところかわって、同時刻頃。
城のどこかの風呂場で。
「自白剤を染み込ませたリップを塗った?」
グレンの声が浴室に響く。一緒にお風呂に入っていたのはジゼルだった。白い陶器の風呂、2人で入ってもまだ余裕がある。
「何やってんだよ。レオにバレたら怒られるぞ」
「だって、あの子色々溜め込んでるのに、爆発してあげないと可哀想」
「俺には使ってないだろうな」
「さて、どうでしょう」
茶目っ気たっぷりに答える彼女の体を抱き寄せる。
「珍しく、他の子に気をかけてやってるじゃないか」
「優しい私は嫌い?」
「いや、何か心境の変化でもあったのかと」
「だってあの子、なんとなく私と境遇が似てるから」
「似てるか?あの子はまだお優しい世界にいたと思うけどな。モンスターの脅威にさらされることなく、他国から侵略されることもなく」
話しながら、骨ばった男らしい手でジゼルの白く形の良い胸を触る。唐突に見えるが、ジゼルは驚く様子もなく、すんなりそれを受け入れた。
固くなった頂きを、固い指先が掠め小さく声を漏らして反応する。
「似てるわよ、生まれ育ちが劣悪な環境だった。私の国の方が死ぬ確率が高かったというだけで。だからなんだか助けてあげたくなるの」
ジゼルの白くしなやかな背中に残る切り傷。グレンが致命傷を避けてつけた傷だ。そっと唇を這わせると、ぴくっと反応する体。
あの日戦場で、泣きながら小型銃を両手で持って、自分へそれを向けてきた。瞳孔が開ききって、自分を見る目は子どもがするような目つきではなかった。
まるで捨て猫が拾われることを最後まで抵抗しているかのようだった。それが今では、こうやって自分の腕の中にいる位、体を好きにされても許す位懐いているんだから、なんとも感慨深い。
「……私ね、死ぬ時は、絶対あなたを守って死ぬって決めてるの」
「なんだよ、急に」
「本気よ」
そう言って振り返る彼女。オッドアイの綺麗な瞳がまっすぐ見つめる。小さな頭に手を回しキスをすると、
「そうやって、返答に困ったからって誤魔化さないで」
これにはお手上げと言わんばかりに、笑うグレン。諦めたかのように重い口を開いた。
「お前がそうやって脅すから、俺は絶対に死ねないと思うよ。仮に俺が先に死んでも、平気であとを追いそうだ」
「よく分かってるじゃない。そうやってプレッシャーを与えてるのよ」
そう言って微笑む彼女は、どこの誰よりも美しい。できれば戦場へは出さず、王妃共々とこの城で生涯安寧に生きて欲しい。
だけど勇ましい彼女はそれを自分に許さず、どこだろうがグレンについてくる。
いつだったか、彼女がこの国へ来てすぐの頃。誕生日を知らないというから、適当に誕生日を決めてお祝いしてやったことがある。
小さな体を覆いつくす程の花束に、サファイアのネックレス。皆きっと喜んでくれると思った。
だけど、彼女は表情一つ変えずこうこう答えた。
『ひとのころしかたをおしえてほしい』
『なぜ?もう戦う必要はないんだよ』
『つよくなりたい。つよくならないとだいじなもの、まもれない』
君に似合うのは、銃や剣ではない。お花や宝石が好きな普通の女の子として生きて良いんだよ、と、ずっと説いてきたのに。
結果は見ての通り、こんなに勇ましくかっこ良すぎる女性へ成長してしまった。
「なぁ、ジゼル。俺はまだお前が今からでも普通の女の子として生きることを望んでるよ」
「無理よ。普通の女の子になってしまったら、この気持ちを消化できなくなってしまうもの」
強い目だ。あの頃戦場で会った頃と変わらない。
「……皆には申し訳ないけど、この国のために、この世界のためになんて、そんな大層なこと考えてない」
細く綺麗な指を、グレンの胸板へ滑らせる。
「ただ、ただ最愛の人を守りたい。生涯かけて尽くしたい。
愛に生きて、愛に死ぬの。私はよっぽどその方が幸せよ」
「たとえ、あなたがこの国のために、どこぞの姫と政略結婚しようとも」
熱烈な愛の告白をした直後にこのセリフとは。
そうだよ、自分はお前のためだけには生きられない。
国のためなら政略結婚だってするし、戦場では王子という立場であっても、命だって惜しくない。幸いこの国には王子が3人いるし、皆いつだって自分の命を投げ打つ覚悟で戦っている。
それが代々うちの教育だった。王のあとを継ぐのは決して血族に限らないという、強くて賢い奴が長を務めていた狩猟民族の名残なんだろう。
俺のことを思ってというなら、武器を捨てて戦場に出るのを止めて城でただ俺の帰りを待って欲しい。
願わくば、大人しく俺の伴侶になって欲しい。
昔、無理矢理、彼女の処女を奪ったのもグレンだった。まだ月のものがくる前だったにも関わらず。お前は女だということを自覚させるため、守られるべきか弱い存在であり戦場でお荷物になる存在だと。
訳が分からず泣く彼女を力ずくで押さえつけて犯した。しかし、体を重ねるうちに男の喜ばせ方を覚えていった。その優越感に浸る姿がどうしても許せなくて悔しくて、ひどい抱き方をしたこともあった。