キスのその後に
最初は柔らかい唇の感触。
あぁ、これがキスというもの。

しかし、浸る間もなくそれはやってきた。

ん?

…くっさ!

強烈なタバコの匂いに、優香は眉をひそめた。
そして次の瞬間、口の中に生温かくてぬるっとした物体が侵入してきた。

何が何だかわからない。
臭いのと気持ち悪いのダブルパンチで目が回りそうだ。

優香は自分から唇を離した。

「どうした?」
間宮が首を傾げる。

「ううん。」
優香は一応笑ってみせた。
彼の目には、優香が恥じらっているように見えたかもしれないが。

おぇ。
吐きそう。

「私、帰るね。」
優香は間宮の顔を見ずに言った。
そして返事を待たずに、背を向けて歩き出した。

「優香ちゃん!また連絡する!」
後ろから声が聞こえたが、振り返らなかった。

残された先輩は、さぞ気まずい思いをしていることだろう。
しかしそんなの私が知ったことじゃない。

優香は早足で歩きながら、頭を整理した。
そして何をされたのかが理解できた瞬間、戸惑いが怒りに変わった。

私の大事なファーストキスが。
なんてこと。
やってくれたな。先輩。

優香は制服の袖で、思いっきり唇を拭った。
口の中がタバコ臭い気がして、吐き気が止まらない。
< 2 / 34 >

この作品をシェア

pagetop