円満夫婦ではなかったので
【一月一日 義実家に挨拶に行った。瑞記が優しくてほっとした。
機嫌が直ったのかもしれない。
よい一年になるといいな】

【一月三日 瑞記が仕事に行った。朝早くに誰かから連絡が来て急に出かけることになったみたいだ。
本当は一緒に私の実家に行く予定だったけれどひとりで行くことになった。
残念だけど仕方がない。実家には彬と叔母様が来ていた。
結婚してから彬とは疎遠だったから会うのは久し振りで嬉しかった。
台湾での仕事の様子を聞くのが楽しかった。仕事を辞めなければよかったと初めて後悔した】


園香はページを捲る指を止めて、息を吐いた。

当時の自分は瑞記が冷たいことを悲しみ孤独を感じているようだが、彼が裏切っている可能性を少しも考えていないようだ。

クリスマスに不在の上連絡も取れない状況で、正月休みは急な呼び出しで出かけて行く。

疑ってもおかしくない状況だと言うのに、なぜか落ち込むだけで瑞記の言いなりになっている。
共感出来るのは、仕事を辞めたことを後悔したと書いてある部分のみ。

過去の自分の行動なのに理解が出来ず、胸中に苛立ちがこみ上げる。

しかしこの日記のおかげで、不仲になっただいたいの時期が分った。

恐らく結婚直後、十二月上旬から溝ができ始め、クリスマスで決定的になったのだ。

まだ記憶に新しい名木沢清隆の姿が思い浮かんだ。

際立った容姿に地位、人柄も悪くなさそうで、財産も申し分ないだろう。

(あの人が夫なのに瑞記を不倫をするのかな)

また隠しきれるものなのだろうか。
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