円満夫婦ではなかったので
「え? あ……ううん、どうもしないけど驚いて。だって記憶がなくなるなんて現実にあると思わなかったもの」
「……そう言えばそうだよな。驚いて当然だ」
瑞記は、はは、と小さく笑った。そうだ今の自分は現実にはなかなかないような状況に置かれているのだ。
「ねえ、何も覚えてない奥さんってどんな感じ?」
「どんな感じって言われてもなあ」
「気まずいとか、新鮮とか、感じることがあるでしょう?」
希咲にじっと見つめられて、瑞記は腕を組み、うーんと唸った。
「そうだなあ……正直言って変な感じがするよ。本人には違いないのにがらりと性格が変わってるんだから、別人を相手にしているみたいだ」
「変わった? どんな風に?」
「楽観的な感じというか、大怪我をして記憶までないのにあまり落ち込んでないんだよな。いつも暗い顔をしていたのが嘘みたいだ」
「ふーん……あとは?」
希咲は園香の様子がかなり気になるのか、興味津々といった顔をしている。