円満夫婦ではなかったので

「やけに堂々としてる。物怖じしないで自分の思ってることを、はっきり言うんだ」

事故の前の園香は、いつも何か言いたそうにしながらも決して口にせずに自分の内に仕舞いこむようなところがあった。
瑞記はそれに気づいてはいたが、小言を言われるのが嫌で見ないふりをしていたのだけれど。

「あまり夫婦仲がよくないって話しただろ? でも園香はそのことを覚えてないから、普通に話しかけて来る。今も見舞いに来ないのを指摘するメッセージを送って来た」

「ふーん、ねえ、そのメッセージ見せてよ」

「え?」

いくら希咲が相手でも、夫婦間のやり取りを見せるのは気が引ける。

しかしニコニコしながら手を差し出されると、拒否するのはかわいそうな気がして、瑞記は渋々ながらもスマートフォンを希咲の手のひらに乗せた。

「ええと、お仕事お疲れさまです。か……敬語まじりだね」

「会話だと敬語なしだよ」

「そうなんだ……なるほど、瑞記が言う通り、以前に聞いていた印象とは違うね。一見気を遣ってる文面だけど、内容は今日どうして来なかったのか説明して、だものね」

「やっぱり怒ってるよな」

瑞記は溜息を吐いた。今日は本当に園香の病院に行くつもりでいた。ただ急ぎの仕事が入りその対応をして、気付いた時には面会終了三十分前になっていたのだ。

園香にやっぱり行けなくなったと連絡しなかったのは、どうせメッセージを読んでいないし伝えなくても大丈夫だと思ったから。

ただそう正直に伝えたところで、彼女が納得するかどうかは分からない。

以前の園香は神経質で疑い深く思い込みが激しかった。状況が変わった今でも根本的な性格は変わらず、ふとしたきっかけで表面に出てくるのではないか。

園香とは何度も言い争いをして来ている。その度に付き合い始めた頃の純粋な好意は薄れていき、今では愛していると言い切るのが難しい程になっている。もうこれ以上言い争いはしたくない。
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