円満夫婦ではなかったので
『社名を決めるのって結構難しいな』

開業に向けて動き始めていたある日。瑞記がそんなことを言い出した。

彼は優しい性格だが、優柔不断で頼りないところがある。

(社名くらいぱぱっと決めちゃえばいいのに)

希咲は内心呆れながらも、にこりと微笑んで返事をする。

『全然思い浮かばないの?』

『冨貴川ワークにしようかと思ってたんだけど、字面がいまいちな気がしてるんだ』

たしかにぱっとしないし、安直だ。

『う~ん……もう少しひねりがあった方がいいかも。私も考えておくよ』

本音は隠して、適当に調子を合わせる。

『ありがとう! 希咲は本当に頼りになるね』

希咲としては雇い主になる瑞記を持ち上げているだけだ。けれど彼は希咲の本音にまったく気が付かない。
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