円満夫婦ではなかったので


『……ふーん。瑞記は園香さんのことが気に入ったんだね』

つい低い声を出してしまったが、瑞記は気付かない。

『ああ……うん、そうだね。園香さんもまんざらじゃなかったみたいで、デートに誘ったらOKしてくれたんだ』

『なんだ。幸せそうじゃない』

『そうかな? どうなるかまだ分からないけど、見合いって思っていたよりいいものだと思ったよ』

『へえ?』

瑞記は仕事の電話が入るまで、ご機嫌で惚気話を続けた。最後まで希咲の心情に僅かも気付きもせずに。

(最悪。瑞記があの女と結婚?……まさか仕事にまで口出ししてこないよね?)

社長夫人だからと言って、希咲のテリトリーに踏み込んで来るなんてことが有ったら我慢出来ない。

それだけではない。

そもそも瑞記の妻が園香というのが納得できないのだ。

今、瑞記が一番優先しているのは希咲だ。客観的に見てそれは間違いない。

けれど彼が結婚したらその序列が変わるかもしれない。

いくら大事にされているとは言っても、希咲はビジネスパートナー。妻と比べたら立場が弱い。

(……破談になればいいのに)

希咲は瑞記の背中をじっと見つめながら、心の中で呟いた。

そうすれば今のまま。希咲が煩わしい思いをせずにすむ。

しかし希咲の願いは届かず、瑞記と園香の関係は極めて順調なようだった。

瑞記が積極的にアプローチし、園香が段々絆されている様子が、瑞記の世間話の合間に伝わってきて希咲を苛立たせた。
ときどき状況をはっきり聞き確認した。
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