円満夫婦ではなかったので
「半年前に帰国して今は本社勤務だそうよ」

「そうなの? 全然覚えてない」

「お正月には、みよちゃんと一緒に挨拶に来たんだけどね」

みよちゃんとは園香の母の従姉で彬くん――白川彬人の母親だ。近い親族とは言えないけど、母親同士が仲が良いのに加え、一歳違いと年も近く、さらに就職先も一緒なので何かと関わりがある。

「彬が来てくれたら助かるけど、出勤日じゃない」

「有給取ってくれると思うわよ。園香のことものすごく心配していたから」

「そうなんだ。お見舞いに来てくれたらよかったのに」

「遠慮したんでしょ? でも瑞記君は殆どいないし来て貰って大丈夫だったけどね」

母の言葉に違和感を覚えて園香は首を傾げた。

「もしかして、彬と瑞記の関係ってよくなかったの?」

「よくないって言うか、彬くんが遠慮してたのよ。既婚者の園香に親族と言っても親しくしすぎるのはよくないって。そこまで気にする必要はないと言ったんだけどね」

「そうね、意外……」

無愛想でマイペースな彼が、瑞記に気遣って園香と距離を置くなんて。

(まあそれが普通なのかもしれないけど)

ビジネスパートナーとはいえ、妻以外の女性を大切な相手だと堂々と言う瑞記の方がデリカシーがないのだ。

正直言って、瑞記の態度には失望している。

彼を好きだった記憶がなくなっていても、夫である人に大切にされていない状況に少なからず傷ついていた。

「彬には頼まなくて大丈夫だから。落ち着いたら連絡すると言っておいて」

母は心配そうにしていたけれど、渋々と言った様子で頷いた。
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