円満夫婦ではなかったので

「私、毎日何を着てたんだろう」

仕事をしていなかったからかもしれないが、これでは不便だったのではないだろうか。

独身時代に着ていた服は引っ越しのときに処分したのか、クローゼット内の服は全て見覚えのないものだった。

バッグやアクセサリー関係もごくわずかで、毎日の通勤には対応できない。一週間後には初出勤の日を迎えると言うのに。

「買いに行くか」

この辺りに土地勘はないが、電車に十五分程乗ればショッピングセンターや百貨店が立ち並ぶ大きな駅に着く。

思い立ったらすぐに行動とばかりに園香は十分後には家を出ていた。

毎日散歩して家の周りの地理には多少詳しくなって来ている。

ちなみに瑞記は全くフォローしてくれない為、自力で道を覚えた。

本当に、考えれば考える程、優しくない夫だと実感する。

駅が見えて来たとき、スマートフォンが鳴った。バッグから取り出して確認する。

白川彬人の名前が表示されていて、園香は僅かに首を傾げながら応答した。

「もしもし、彬?」

「ああ。今話せるか?」

「うん、どうしたの?」

園香は道の端に寄り立ち止まる。彬から連絡が入るのは、実家からマンションに移ったときに報告して以来だ。
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