円満夫婦ではなかったので
午後七時。彬から待ち合わせ場所と連絡を受けた、レトロなダイニングバーの扉を開いた。
彬はもう着いていて、手提げ四袋という大荷物で現れた園香を見て驚いた様子だった。
「ごめんね、遅くなって」
「俺も今来たところだけど、買い物中だったのか?」
「そう。通勤で着る服がなかったから」
「随分、沢山買ったな」
「これでもまだ足りないくらい。服だけじゃなくて、靴とバッグも必要だからね」
どういう訳か、シューズクローゼットには夏のサンダルと、冬のショートブーツしかなかったのだ。
まるで新社会人が一から揃えなくてはならないような状況だ。ただ予算があるのでネットで安く買ったり、実家から使えそうなものを取って来るなどする必要がある。
独身時代の貯金があるとはいえ、あまり使い過ぎたくない。
瑞記から貰える生活費は月に六万円でそれで食費から園香の個人的な支出まで賄わなければならないのだから。
(……六万円って金額はどうやって決めたのかな)
園香の感覚では心もとない金額である。しかし家賃や光熱費など全て払って貰っているのだから感謝しなくてはならない。
と思うものの、七桁はしそうな時計を身に付けていたりするところを思い出すと複雑な気持ちになる。
(まあ自分が働いたお金で買ってるんだからいいんだけど、でもそれなら私が働くのを邪魔しないで欲しい)