円満夫婦ではなかったので
午後五時。初出勤を終えて帰宅した園香は、機嫌よく夕飯の準備をしていた。
(教育係の青砥さんはいい人だし、他の同僚も好意的でよかった)
ショールームの仕事は初めてだが、ソラオカ家具店の扱い商品については知識があるので、早々に馴染めそうだと手ごたえを感じている。
久々に多くの人と交流して、時間を忘れて仕事をして、疲れたけれど充実した一日だった。
(外に出る決意をして正解だったな)
気分良く、野菜たっぷりの味噌汁と帰宅途中に買った煮魚と、作り置きの副菜をテーブルに並べる。
食事をしながら今日説明された内容を復習しようと考えていたとき、玄関のドアが開く音がした。
(瑞記?)
彼が帰宅するとは思っていなかった。園香は驚き椅子から立ち上がる。
そうしているうちにリビングの扉が開き、ボストンバッグを手にした瑞記が入って来た。
彼は園香を視界におさめると暗い顔をした。
「いたのか」
失礼な態度と言葉に苛立ちを覚えたが、顔に出さずに口を開く。
「お帰りなさい」
「ああ……丁度よかったかもしれないな」
「ちょうどいい?」
「園香に言っておくことがあるんだ」
憂鬱そうな暗い顔をしていた瑞記が、突然居丈高な表情に変わる。体の前で腕を組む姿勢をとり園香を見据えた。
「離婚はしないことにしたから」
「え?」
怪訝な表情の園香に、瑞記は苛立ちの表情で続ける。
「この前離婚の話が出ただろう? 考えた結果離婚はなしにすることに決めたってこと」