円満夫婦ではなかったので
彼の言い方は夫婦についての今後を話し合うのではなく、決定事項を伝えるものだった。

「……初めに離婚を言い出したのは瑞記だったはずだけど」

気を遣いながら穏やかに話しても瑞記には通じない。都合よく解釈して話が終わってしまうと何度かの言い争いを経て気付いているので、はっきり否定しなくてはならない。

(瑞記はすぐに曲解するんだもの。その度に違うと声を上げないとおかしなことになる)

「僕が言ったのはこのままだといずれ離婚になるってことだろ? 離婚するなんて言ってないのに、園香が勝手に騒ぎ始めたんだ」

「瑞記は私の態度が気にいらなくて、今後態度を改めないなら離婚になるって言ったはず。だから私は自分を変えるつもりはないから離婚でいいと返事をしたのよ」

即座に言い返すと、瑞記が不快そうに眉を顰めた。

「私は仕事を辞めるつもりはないし、他の面でも瑞記の気に入らない行動をするかもしれない。そもそも私たちは考え方や価値観が合ってないと感じているの」

「価値観が違う? そんなの離婚したい奴の言い訳じゃないか! どうして合わせようとしないんだよ!」

瑞記は柔和な容姿が与える印象とは違い激高しやすい。今のところ意図的な暴力は振るわれていないけれど、以前強く手を振り払われたことがあるから油断は出来ない。

(すごくイライラするけど、私はこれ以上感情的にならないようにしなくちゃ)
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