円満夫婦ではなかったので
「僕が離婚しないって言ってるんだから、感謝するところじゃないのか?」
(でもむかつく! 瑞記はどうしてこんなに偉そうなの?)
瑞記は園香がおかしいと言うけれど、園香からすれば瑞記が異常に勝手に思える。
(彼と平和的に議論出来る人なんて存在するの?)
「ほら、結局言い返す言葉がないんじゃないか」
園香が懸命に落ち着こうと努力している姿を見てまた曲解したのか、瑞記が得意気な顔をする。
いろいろ文句はある。しかし園香はその気持をぐっと堪えた。
「瑞記が何と言おうと私は離婚に向けて動くつもりだから。こんな風に言い争ってばかりいるより、別れてやり直した方がお互いの為になるはずだから」
「まだそんなことを言ってるのか?」
「まだって……私は離婚を決心するまでに沢山悩んだの。決心した以上考えを変えるつもりはない」
瑞記のように感情的に突っ走っている訳じゃないのだ。
(どうせまた怒り狂って出て行くんでしょう?)
これまでの経験から、瑞記は思い通りにならないと家を飛び出して数日帰宅しなくなる。今回も同じようなものだろうと、被害を受けないように距離を置いて様子を見守る。
(今となっては話し合いも無駄に感じる。早く出て行ってくれないかな……)
園香は重い気持ちでそんなことすら考えている自身に自嘲した。
記憶がないとはいえ、結婚までした相手なのだからいつか愛情を思い出すと信じていた。
けれど、結果は離婚。
瑞記のよいところを見つけることが出来なかった。きっと出会った頃のふたりの関係とは変わってしまったからだろう。
全てが彼のせいだとは思わない。園香の言動にも問題があって瑞記を頑なにさせているのだとは思う。
だから納得はいかないが、円満離婚という形で終われたらいいのに。