ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
郵便物の回収も部屋の掃除も、ただの口実だと知ったら……貴志さん、怒るかな。それとも、私のプライベートなんて興味ないだろうか。
――オレは聞きたい。織江のこと、もっと知りたいから。
見上げた天井が、圧迫感を覚えるほど低く感じる。
もう長く暮らしてる見慣れた我が家のはずなのに。
想像以上に早く深くタワマン生活に馴染んでしまってる自分に気づいて、危機感を覚えた。
クロスさせた腕で目元を覆い隠し、静かに胸の痛みに耐える。
やっぱり同居なんて間違いだった。
するんじゃなかった。
だって、たった2週間で私はもう知ってしまった。
彼の寝起きのぼんやり顔が可愛いこと、意外とよく笑うこと、箸使いがきれいなこと、たまに子どもみたいなドヤ顔すること、何かに集中すると食事も忘れてしまうこと……
彼について新しい発見をするたび、どうしようもなく胸がときめいて、目が離せなくなってしまう。
もちろん、私だってちゃんとわかってる。
私たちは付き合ってるわけじゃないし、彼にとって私は単なる遊び相手候補。
想いが募れば募るほど、この後に待ち構えているもろもろの展開は辛くなるばかりだろう。
なのに最近は浅ましいことに、傷ついてもいいからもう少しだけ一緒にいたいと、この幸福な生活を手放したくないと願っている自分がいる。
Mっけでもあったのか、と自嘲気味に頬を歪めて自分の末期症状ぶりを嗤い、腕の隙間から開け放った窓を見上げた。
青さが際立つ空に浮かんでいるのは、夏の盛りを感じさせる綿菓子のような白い雲。まだ6月に入ったばかりだというのに……。
私はそこに答えを探すみたいに目を凝らし、ぽつりとつぶやいた。
「このままじゃ、ダメだよね……」