ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
“昨夜みたいに”――そう、同居を始めて1か月、いつからか貴志さんは私をこんな風にハグしてくるようになった。
絆されつつある私の気持ちを察知したんだと思う。
一緒に買い物に行ったり、食事の準備や後片づけをしたり、
英語力向上のための洋画鑑賞会は、もはや週末のお約束だし――なんだかんだで、最近は一緒にいる時間がかなり増えて。
それと比例するように、スキンシップも過多になっていって……その延長線上のハグ。昨夜も、お風呂上りに“いい匂いがする”って抱き寄せられた。
キスやセックス、という決定的な展開にこそなってないけど、時間の問題だ、っていう気もするくらいギリギリの状態。少なくとも、同居人という枠は完全に越えてしまっている自覚はある。
もしこれが全部彼の作戦なのだとしたら、お見事としか言いようがない。
もちろん、無理やりどうこうされれば抵抗するつもり、ではあるけど。
彼に構われてる今に幸せを感じる自分もいるわけで……。
――ジムでバッタリ会ってさ。そういうことになっちゃったんだ。悪く思うなよ。
特に、貴志さんとキララのツーショットの夢を見てしまった朝は、その日一日引きずってしまって胸が苦しくて。
そんな時に優しくされると、ホッとせずにはいられないのだ。
あぁまだ彼は、私が知ってる村瀬貴志なんだって。
あの後キララには出くわしてないし、マンションは購入できなかったんだと思いたいけど……。
「織江が優秀で、健気な努力家だってことは、オレだけが知ってればいいのにな……」
ボソッと頭上でまた、声が聞こえた。