ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「え? ごめんなさい、なんて言ったんですか?」
急いで顔を上げて聞き返すが、独り言だったようで、頭をポンポンされて流された。
「そろそろ織江が落ちてこないかなぁと思って」
「絶対違いますよね?」
「本心だけど?」
「いえ、そうじゃなくて、今言いかけたこと――」
それ以上の言葉は言えなかった。
後ろから私の顔を覗き込んだ彼に、むに、っと上下の唇を指で挟まれてしまって。
「どっかのキャラクターみたいだな。ヒヨコの可愛いヤツ」
「…………」
無言のまま不満を込めた目線を上げれば、彼は私を解放した手で膝を叩いて大ウケ。
そんなに面白い顔だったのかしら。
「可愛いって言ってるだろ、喜べばいいのに」
「私はヒヨコじゃありませんっ。ほら、仕事溜まってるんでしょう。早く戻りますよ」
こんな他愛のないやり取りは、幸せでたまらないけど。
まるで麻薬のようにずぶずぶと、私から理性を奪っていこうとするから困る。
彼とは、これ以上関わりを持っちゃいけないのに……
「副社長がサボってたらいけませんっ」
苦い思いを胸の奥にひた隠した私は、まだ可笑しそうに笑いをかみ殺してる貴志さんの背中をぐいぐい押して、会議室を後にした。