ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

そんなオレの思惑とは裏腹に、同居生活はごくスムーズに、比較的(・・・)健全に始まった。

初日の反省を生かして、努めて紳士的な行動を心掛けたせいもある。無理やり行為を強いて、嫌われたくなかったのだ。

ユキの援護射撃(?)のおかげで彼女の手料理を食べられることになり、2人の時間が取れるようになってからは、言葉で、態度で、彼女を散々構い倒した。
些細なことで照れてしまう彼女の初心な反応は想像以上に可愛くて、まるで好きな子をいじめたくなるガキのように連日揶揄ってしまった。

もちろん、セックスはおろかキスすらしていない。
正直、ここまで我慢できるとは思わなかったが……いつの間にかオレは、彼女と一緒に過ごす時間を純粋に楽しんでいる自分に気づいた。

「お帰りなさい」と迎えてくれる相手がいることがこんなにも心安らぐものだなんて知らなかったし、「おはようございます」と彼女が微笑んでくれるたびに欠けていた心のどこかが満たされていくような気がした。
彼女のことをもっと知りたい。もっと笑ってほしい――オレだけのために。自分でも説明しようがない衝動めいた気持ちに襲われるようになったのも、この頃だったと思う。

やがて、努力が奏功。
薄れていく彼女の警戒心を感じ取ったオレは、買い物や食事の支度を手伝うなどして、さりげなく一緒に過ごす時間を増やした。彼女の反応を見つつ、時々抱き寄せたり身体に触れたり、接触のレベルも上げていく。

それと同時に、織江へオレ絡みの仕事を集中的に割り振るようユキにこっそり指示、社内でも積極的に関わっていく。幸い、英語も中国語も得意な彼女は、すぐ新規プロジェクトになくてはならないメンバーとなった。

――現地とのやり取りも、もう山内さん抜きには考えられないね。
――いっそのこと正社員になっちゃえばいいのに。中途採用、山内さんなら余裕で突破だろ?

途中、彼女が優秀で頑張り屋だってことはオレだけが知ってればいいのに、と、想定外の嫉妬に駆られたりもしたけれど……。

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