ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

RRRRRR……


ふいに、カバンの中から着信音が響いた。
貴志さんだろうか? 空港から、とか? 何を話せばいいの?

乱れた気持ちのまま慌ててスマホを探り出し、そのまま通話をオン。

「……はいっ、もしもし」


『あーお姉ちゃん? キララだけどー』


流れてきた声に、ドッと脱力した。
ディスプレイ、ちゃんと確認すればよかった。

「……どうかしたの?」

答えながら、思い出す。
昨夜、このホテル内で彼女と鉢合わせしたことを。まさか――

『村瀬さんて、素敵な人ね』

すっと寒気を覚えて、鳥肌だった。
そのくせ、嫌な汗がジワリと滲んでいる。

「何よ突然……」

耳を塞ぎたくなるのを必死に堪えていると、相変わらず子どもっぽい舌足らずな声が『別にぃ』と嘲った。

『ちょっと今日はお知らせしとこうと思って。お姉ちゃんのお見合い、キャンセルになったから』

「……は?」


『だって、お姉ちゃんに務まるはずないもんね、リーズニッポンの副社長夫人なんてさ』


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