ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
普段通りの声に恐る恐る顔を上げると、困ったように微苦笑する副社長がいて、胸がきゅんきゅん小躍りした。
彼は普段あまり笑わないが、だからこそたまに拝めるその希少な笑顔は破壊力抜群で、いつも腰が砕けそうになってしまう。
ダメだなぁ。
一度だけ、彼とそうなれたらもう十分って、それでもう忘れなきゃって思ったのに……。
想いを断ち切るって、本当に難しい。
「いえいえ、とんでもない。さすがは我らが副社長だって噂してたんですよ、ね、織江」
「へ? あ、ぁあ、うん」
やめて! いきなり話を振らないでっっ!
狼狽えつつも、こくこくなんとか首を縦にする私。
すると。
「……あー……あのさ、山内さん」
彼が口にしたのは、確かに私の名前。
その眼差しが見つめているのは、間違いなく私の顔。
心臓が、爆発するかと思った。