ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「さすが! かぁっこいぃ~」
あちこちからあがるつぶやきに、全力で頷いてしまう。
確かノリちゃんから聞いた話だと、彼女はどこかの社長令嬢で、副社長とは縁続き。従姉弟だったはずだ。
でも、彼女がコネを匂わせたことなんて、私が知る限り一度もない。正当な実力で評価されて今の地位を手に入れ、副社長からも信頼されてる。
社長令嬢っていう立場、アラサーっていう年齢……私とそれほど違わないはずなのに、この差はなんだろうな。
見つめる私たちの前で、警備員が動く。
社員証をかざして通る正規ゲートの横、別の入口が開かれた。副社長用だ。
コツン、コツン、と硬質な靴音が近づいてきた。
「おはようございます」
ごく自然に挨拶するノリちゃんに続き、緊張しながら頭を下げた。
いつもは私だって挨拶や立ち話くらいするのだが、さすがに今日は声が喉の奥に貼り付いて、何も出てこない。
「おはよう」
思いのほか近い距離から聞こえた透明感のあるバリトンに、ドキリとする。
「朝っぱらから悪いな。騒々しくて」