ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
体内で歓喜が爆発する。
その場で叫び出さなかったことが不思議なくらいだ。
まさか、こんな奇跡が、運命みたいな奇跡が起きるなんて。
きっと彼女はそのこと、つまり見合い相手がオレだってことは知らないんだろう。もし知っていたなら、ビッチを装ってオレを誘惑する必要がどこにある? 印象は最悪だし、見合いどころじゃなくなる。
彼女がオレに好意を持っているならなおさら、むしろ何もする必要はなかった。
そのまま見合いの日を待っていればよかった。
だからもちろん、彼女は何も知らなかったんだ。
オレだって、親父から写真をもらうまで、相手のことなんて何ひとつ詮索しなかった。彼女も同様に、見合い相手に興味なんてなかったんだろう。
相手が誰でも同じこと。
自分が結婚するという事実は変わらない。
どうせ逃げられないならば、その前にせめて初体験だけは――
するすると霧が晴れていくようにいろんなことがクリアになっていき、突然笑い出したオレを親父がギョッとしたように見てたっけ。
――そういえば、週刊誌にお前の記事が載っていたな。パーティーに本命の女性と現れた、とか。
――あぁ、それは問題ない。見合いには影響ないから。
――その相手とは、ちゃんと手を切るということか?
――いや、そうじゃないけど。大丈夫、全部上手くいくから。
訳が分からない、といった様子で親父は眉を寄せていたが、構うもんか。
その時にはもう、頭の中で計画は固まっていた。
ギリギリまで織江には黙っておこう。
当日いきなりその席にオレが現れたら……彼女はどんなに驚くだろうな。
もう逃がさない。今度こそはっきり聞かせてもらおう。
オレのことをどう思っているのか。
想像するだけで楽しくて、フライトの間もずっと、口元が緩んで仕方なかった。
早く、早く会いたい。
「織江……」
つぶやくオレの視界に、見覚えのある銀色の高層ビル群が見え始めた。