ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
翌日、月曜日の早朝、オレは成田空港に到着した。別の仕事のため国内線へ向かう親父を見送ってから、迎えにきた車に乗って都心へ。
これから直接、会社へ向かうつもりだった。
今日一日くらい休みを取ってもよかったが、どうせ織江も出社してるのだ、会社に行けば少しでも早く会える。
1週間ぶりだな、と考えるだけで鼓動が忙しくなっていく。
車列はスムーズに進んでいたが、それでも遅すぎるような気がしてならない。
早く、早く会いたい。
逸る気持ちの理由は、“会いたい”ばかりじゃない。
とある事実を、親父に聞いたせいだ。
――お前の見合い、相手を決めたからな。そろそろ身辺は綺麗にしておけ。
昨夜、帰国便を待ちながら空港のVIPラウンジでそう言われた時は、しまったと思った。織江の見合いを阻止しなければとそのことだけ考えて、自分の見合いについては全くノープランだったから。
――親父、そのことなんだけど、実はオレ……
口を挟もうとしたオレを遮るように、大判の封筒が渡された。
――一星百貨店の社長・山内耀司氏のお嬢さんだ。
百貨店の社長令嬢?
また意外な業界から選んできたなとは思ったものの、山内耀司氏と言えば経済界でも顔が利く人物として知られている。
親父ともつながりがあったんだろう。
ただもちろん、その娘に興味はない。
突っぱねかけたが、そこでハタと口を噤んだ。
一星って、織江が前に勤めていた所じゃないか?
そういえば織江の名字も山内……いや、山内なんてそう珍しくもないか。
一旦頭の中で否定したもののなんとなく気になって、手渡された封筒の中を覗いてみた。
そして二つ折りになったしっかりとした台紙を開いた瞬間――……息が止まりそうになった。
そこに映っていた振り袖姿の女性は、今より少し幼く見えるが、間違いなく織江だったのだ。つまり。
『私、私っ……もうすぐお見合いするんですっ』
彼女が言ってた“見合い相手”っていうのは、オレのことだったのか。