ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
鈍い思考回路をなんとか動かし――あぁ、昨夜水を飲んだ時にキッチンへ置きっぱなしにしたんだったと思い出し、そちらへ向かう。
そこにズラリと並んでいるのは、織江の思い出しか語らない調理家電たち。あのホットサンドメーカーで作った日曜の朝食は最高だったな、なんてもはや無意識に考えてしまう自分にうんざりしながら、スマホを手に取った。
「……はい、ユキ?」
休みの日に彼女が連絡を寄こすのは珍しい。
何かトラブルでも起こったんだろうか、とスマホを耳に近づけた。
『あぁよかったわ、出てくれて。今時間ある? 今から言う場所まで来てほしいんだけど』
「は? 今から?」
今は一体何時だろう……たぶん、夕方。もうすぐ夜? まぁどうでもいいが。
面倒くさいとしか思えなかったオレは、冷蔵庫から缶ビールを取り出しながら、「忙しいんだ」と真っ赤な嘘をついた。
『嘘おっしゃい。どうせやさぐれてお酒でも飲んでるんでしょ。いいからとっとと来なさい!』
監視カメラでもついてるのか?
ギョッとして周囲を見渡すと、『貴志の行動パターンなんてお見通しなのよ』とまたもや恐ろしいことを言われた。
『とにかく今すぐ来るのよ。住所送るから』
有無を言わせない強い口調が続き、こっちの返事も聞かずに切られた。オカンか。
……仕方ない。
言い出したら聞かないからな、うちのファミリーは。
嘆息しつつ、のろのろと缶を冷蔵庫に戻した。
すぐにピコン♪と軽い音と共に届いたメッセージには、新宿の住所が記されている。
新宿か……
自分の格好を見下ろして、さすがにこのままじゃ外には出られないだろうなと腹をくくったオレは、重怠い身体を叱咤してバスルームへ向かった。