ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
指定された新宿の一角、大通り沿いでタクシーから降りる。
土曜日の夜ということもあって大勢の人が行きかっていたが、すぐにユキはこっちを見つけたようだ。足早に近寄ってくるのが見えた。
「何? どうしたんだよ。何かあったのか?」
尋ねるオレを無視して、黒シャツにデニムというこっちの格好をじっくり眺めた彼女は、最後にはくんくんと匂いを嗅ぎ、ようやく「まぁ合格ね」と訳のわからないことを言い頷いた。何なんだ一体――
「ここのビルにね、山内さんが入っていったの。あ、織江さんの方よ」
反射的に鼓動が音を立て、そんな自分に腹が立った。
「……何を考えてるのか知らないが、余計な事はしないでくれ」
あの日会議室で何があったのか、ユキには話したはずなのに。
どうして放っておいてくれないんだ。
苛立ちを抑えつつ言うと、ユキが「実は今日ね」と言い出した。
どうやら嶋さんに頼んで織江を呼び出してもらい、2人で話をしたらしい。その際の様子がおかしかったことから、彼女が乗り込んだ車を自分の車で尾行したのだとか。
「『お金目当てで副社長に近づいた』って彼女、私に認めたわ。それをあなたに知られた以上もう傍にいられない、と。あなたが彼女に逆ナンされたこと私は知ってるし、最初は彼女のこと疑ったこともあったから、本当かと一瞬信じかけた。でもね、席を立った時に見えたのよ。膝の上で握りしめたあの子の両手、震えてた。だから思ったの、本心じゃないなって」
本心じゃない……?
ドキリとした。
それは、あの日からずっと、オレが渇望してきたことだったから。
「嶋さんて、山内さんの幼馴染なのね。彼女の話、聞かせてくれたわ。今のお母さんは継母で、いい関係とはいえないんですって。まぁあの妹を見れば想像はつくけど、比較されて、ずいぶんひどい扱いを受けてきたみたいなのよ」
恋人を妹に奪われたこともあるらしいと聞き、ハッとした。
3週間前の話では、オレに乗り換えるために元カレと別れた、というようなことを言ってやしなかったか?
じゃああれは……