ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

軽い世間話、数杯のカクテル……
あくまで正体を明かすつもりはないようで、どんなに質問を重ねても、身バレにつながるような答えはしなかった。


――名前、聞いてもいい?

――……じゃあ、東京花子で。


役所書類の記入例みたいなあからさまな仮名が返って来た時は、口の中の酒を吹き出しそうになった。

巧みに言い逃れてオレをけむに巻く彼女に、焦れてくる気持ちと比例するように興味が沸いた。

一夜の遊び相手を求めていると、言葉からも外見からも伝わってくるのに、なぜかその瞳の奥には思いつめた色が見えるような気もする。

一体、何を隠してる?
何が彼女を、ここまで大胆な行動に駆り立てている?


――よかったらこの後もう少し……

自分の腕に触れた彼女の手を、オレは振り払わなかった。その指先が、微かに震えていることに気づいたからだ。
きっと、何かあるに違いない。

隠されれば隠されるほど、知りたくなるのが人の(さが)
華やかに塗り固めた容姿の向こう、鎧のように閉ざされたその奥にあるものを、俄然知りたくなっていた。

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