ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「織江?」
「は、はいっ」

背筋を伸ばして答えたら、貴志さんが真剣な面持ちで私を見つめていた。

「実の親を告発しようというんだ、よほどの覚悟だったんだろうな? 君の口から直接内容を聞かせてくれないか。原稿はあんな風になってしまったことだし」

鋭い視線で睨まれて、握り締めたゲラを見下ろし青ざめるお父さん。

「き、聞く必要なんてないっ!」

急に逆ギレみたいに叫ぶと、私の腕を鷲掴んだ。

「いや、失礼しました。私が甘やかして育てたのがいけなかったのでしょう。お恥ずかしい。これは身内の問題ですので、今日はもう――」
「本当に、身内の(・・・)問題だと言うんですか?」

「私もぜひ聞きたいですな。御社のビジネスにはうちも随分関わらせてもらっている。もし不正があったのだとしたら、他人のフリはできませんのでね」

追い打ちをかけるような村瀬社長の言葉で形勢が不利だと悟ったのか、両親は何やら視線を交わし合っている。

「やましい所がないのなら、でんと構えていればいい。まずは話を聞こうじゃありませんか」

お父さんの手から力が抜けて行き、私の腕は解放された。
収まりがつかないらしくそれでもしばらく突っ立っていたが、やがて諦めたのか元の位置へ憮然と腰を下ろした。
お母さんとキララはまだ、宇宙人でも見るような目でこっちを見ている。

まぁ、話すのを邪魔されないなら別に構わない。
この際もう、全部ぶちまけてしまおう。

コクリ、と息を飲み、私は視線に力を込めた。

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