ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

あぁ……そういうことか、と重苦しい気持ちで理解する。

お気に入りのいろんなものをキララに取られまくっていた私は、佐々木君と付き合ってた頃、キララと彼を会わせないようとても気を使っていた。
恋人がいることすら、絶対匂わせないようにしてた。

なのに、いつの間にか2人は出会って、付き合うようになっていた。
キララは、佐々木君が私の彼氏だと知っていた。

ずっとずっと不思議だった。
どこでバレたんだろうって。

きっと塩沢が教えたんだ。
キララの私への対抗心を利用して彼女を煽り、佐々木君を誘惑させた。一星の調査に私が集中できない環境を作るために。
もしかしたらその後社内で起きた誹謗中傷も、この男が流したものかも……今となっては、確かめるすべはないけれど。

すべては、仕組まれていたのだ。

悔しくてたまらないし、見抜けなかった自分にも腹が立つ。

でも……
とはいえ、まるきり悪いことばかりでもなかったかな。

だってこれで今度こそ、このお見合い話はなくなるはずだから。
今日の一連の醜態を見て、こんな家族と縁戚関係になりたいと誰が望む?

ポジティブに考えるならば、少なくともそれだけは喜んでいいだろう。

そう言い聞かせて、自分を慰めるように浅く頷いた時だった。


「勝手に終わりにしないでもらえますか」


凛とした声を上げ、退出しようとする山内家の面々を止めたのは――貴志さんだった。


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