ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「織江は今日一日有給取ったんだろ?」
「はい、そうですね」
一星に正社員として採用された。
秘書室アシスタントとして引き続き働いていて、結婚後も続ける予定。ノリちゃんや高橋さんを始め、以前と変わらず温かく迎えてくれたみんなにはもう感謝しかない。
本当に恵まれてるなぁと実感してる。
「じゃあこの後、リモートで式の打ち合わせでも大丈夫だよな? 担当者にさっき連絡したら、今空いてるっていうから。それからドレスだけど、こっちでデザイン決めておいて、現地の工房に――」
「た、貴志さんっ」
「ん?」
……とはいえ。
どんどん進んでしまう結婚式の準備に、ちょっとついていけてないのも本当だ。しかも、なんとシンガポールで挙げるというんだから。
うちの両親や親族の出席は見込めないし、マスコミが騒ぐことだろうし、ということで決まった海外挙式。こぢんまりしたものになるのかと思ったら、なんとリーズグループの総帥自ら出席してくださることが決定してしまい、あまりの展開にしばらく震えが止まらなかった。
『捜査が終わるのを待ってたら、何年たっても結婚できない』という彼の意見もわかるし、結婚したいのは私で、一星じゃないから、と言ってくれたのも嬉しかった。
それはもう、本当に幸せだなと思うんだけど……。
「あの、本当にいいんでしょうか……私が花嫁だなんて。あの父の娘、ですし、貴志さんにあんなケガを負わせた理由を作った女ですよ?」
社長夫妻を始め、秘書室のみんなもこの結婚をとても喜んでくれている。
だからこそ、なんだか心苦しくて。
「ケガについては、もうすっかり回復してるし気にしなくていいって、織江が身をもって知ってるはずだけど?」
こっそり耳打ちされて、一緒に過ごした昨夜のことを思い出した私はどっかんと頬を火照らせた。
そしてそんな顔を見せたくなくて、くるりと背を向ける。
「そ、それはそれ、これはこれ、ですっ」