ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「それにしても、貴志らしくないわよ。社内の人間に手を出すなんて。厄介なことになるのは十分わかっていたでしょ?」
まったくその通りだ。
自分でもそう思う。
思うんだが……なぜか、後悔はしてないんだよな。
彼女を抱いたこと。
端的に言えば、それくらい身体の相性がよかったってことだろう。
ただ、単なる快楽以上の何か、初めての感覚を感じたような気も……自分でも上手く言葉にできなくて、もどかしいんだが。
彼女が同意してくれたら関係を続けられないかとも考えた。
だが何度考えても、やっぱりそれは難しいな。
副社長という立場上、いずれ政略結婚は避けられない。
その時になって別れたくないと駄々をこねられても困る。
余計な関係は作らない方がいい。
結婚、か……
面倒なことを思い出してしまったな、と吐息をついて。
そろそろ仕事をしようと立ち上がる。
デスクを回り込み、椅子へと向かうオレを目で追い、ユキが言った。
「念のため言っておくけど、彼女、山内さんは派遣社員よ。確か前職は経理だったから、心配なら、適当な理由をつけて経理部へ行ってもらうこともできるけど……」
彼女に会えなくなる。
そう閃くなり、「いや、いい」と拒否の言葉が飛び出していた。
「何か目的があるなら、近いうちにアクションを起こすだろ。目の届くところに置いておいた方がいい。しばらく様子を見よう」