ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「……ありがとうございます。紫陽花、いただいていきます」
涙を拭って言うと、住職様は相好を崩して「よかったよかった」と頷いた。
「これで肩の荷が下りましたよ。ちょっと待っていてください。そのまま持って行くのは大変でしょうから、袋をご用意しましょう」
寺務所の中へ入って行くその背中を見送りながら、「貴志さん」と呼びかける。
「ん?」
「私……今はまだ、やっぱり父のこと許せないんです。これから先も、許せるかどうか、自信はありません」
「……あぁ」
「でも、来年、この紫陽花にピンク色の花が咲いたら」
この紫陽花が、レディミツコだとはっきりしたら。
「父も母を愛していたこと、2人が確かに愛し合っていたこと……それだけは、信じてもいいのかなって、今は思います」
貴志さんの手に自分の指先を滑り込ませて、きゅ、と握る。
微笑む彼と視線を絡ませてから、もう一度、一緒に鉢植えへと目をやった。
お母さん、私、幸せになります。彼と一緒に。
もう心配しないで。
もう大丈夫だから。
心の中でつぶやいたら、その葉がわずかに揺れ――爽やかな秋の風が、高く澄んだ青い空へと抜けて行った。
◇◇END◇◇
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました! まわりみち


