ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「おかえりなさいませ、お嬢様」

インターホンでのやりとりの後、お手伝いさんらしい中年の女性が愛想よく門を開けて迎えてくれた。
お正月に帰った時とは違う人だから、新しく雇ったんだろう。本当に人が続かない家だと呆れつつ、旅館みたいに古めかしい日本家屋へ入って行く。

お継母さんは洋風の家に建て替えたかったらしいが、歴史ある建物を壊すことをお父さん側の親族が承知しなかったのだとか。
ぶちぶち文句を言われたっけ。
私のせいじゃないんだけどな。

代わりに、内部は自分好みのインテリアで統一することにしたようで、玄関周りや土間には、アンティーク調のランプや陶磁器人形、花瓶などがごちゃごちゃと並べられている。
毎月のように海外旅行へ出かけるあの人が、ガレだリヤドロだと買い込んできては顔を合わせるたびに自慢してくるのはもはやお約束だ(もちろん、私へのお土産ではない)。

今日はどんな逸品(・・)を披露されるんだろうとうんざりしながら客用スリッパに履き替え、鶴田と名乗った女性の後ろからついていく。

お母さんが生きていた頃、玄関はいつもすっきり片づいていて、四季折々の花が飾られていた。

うちには、広い日本庭園がある。年中無休の花屋さんみたいにどんな季節でも何かしら咲いているから、何本か摘んでくるだけでいいのに……と庭を囲むように伸びた廊下にさしかかり、何気なく視線を動かした私は――そのままギョッと目を剥き、一歩も動けなくなってしまった。

声を失う。

これは……一体どういうこと?

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