ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「ところでさ、僕たち同い年なんだから、いい加減敬語はやめない? 嶋さんとはタメ口でしゃべってるだろ?」
勧められた向かい側のソファに私が腰を下ろすと、岡田さんがむくれながら見つめてきた。ふふ、女子みたい。
ちょっと調子いいんだけど、小動物みたいで憎めないんだよね。
彼やノリちゃんを始め、秘書室のメンバーは付き合いやすい人ばかりでほんとにありがたいと思う。陰険なイジメを目撃してきた前職に比べれば天国のようだとしみじみしつつ、「彼女は幼馴染なので」と笑顔で返した。
その時だった。
フロアの入り口付近の社員たちから「お帰りなさい」という声が上がった。
振り返った先にいたのは、連れ立って歩く副社長と高橋さん。
従姉弟同士という気安さなのか、彼の表情もリラックスしてるように見える。自社CMに推薦したいほど調和のとれた美男美女カップルだ。
私も、高橋さんくらい才色兼備だったら……もう少し自信が持てただろうか。
「あの2人さ、付き合ってるんじゃないかって思ったことない?」
私の視線を追っていた岡田さんが、ふと身を乗り出して声を潜めた。
「え? えっと……でも、副社長には彼女さんがたくさん……」
「カモフラージュかもしれないよ?」
自信ありげにニンマリされて、「カモフラージュ?」と当惑する。
モデルやアイドルとのお付き合いが、ってこと?
「そう、高橋女史っていう本命を隠すためのね。中条瑠衣たちはただの遊び。もしくは、事情を説明して協力してもらってるのかもな。副社長とスクープされれば名前売れるし、彼女たちにもメリットあるだろ」
「え……」
まさかぁ、と言い返しつつも、胸がざわつく。
確かに2人は仲がいい。あんな美人が傍にいるのに、よくアイドルなんかに目移りするなと思ったこともある。
「でも、隠す必要なんてないじゃないですか。社内恋愛禁止、なんてルールがあるわけじゃないし、従姉弟でも結婚はできますし」
控え目に主張する私の目の前で、チッチッチ、と人差し指が意味深に揺れた。
「いくら公私混同はしませんって約束したところで、秘書が恋人って問題視する人はいると思うよ。かといって、他の秘書を使うのも嫌だとしたらさ、内緒で付き合うしかないんじゃない? 正式に結婚、ってことにでもならない限り」
「それは……っ」
もっともな言い分な気がして、顔が強張った。