ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「そもそもさ、副社長ってプライベート明かさないけど、仕事ぶり見てる限りストイックでクールな人じゃん? いくら重圧があってストレス発散したくなったとしてもさ、アイドルとかモデルとか、そういう類の女の子と遊ぶってイメージ、どうも重ならないんだよなぁ」
そりゃ、私も同じことを感じたことはある。
社内と社外で、随分違うなぁって。
「で、実は僕、見ちゃったんだよねー」
「み、見た?」
聞きたくない、と思っているのに、私は岡田さんに手招きされるままさらに顔を寄せていた。
「今、僕ソムリエールの子と付き合っててさ。週末の夜とか、彼女の仕事が終わるのをそのワインバーで待つわけ。でね、もう3度、その店で見かけてるんだ。あのツーショット」
「え」
口の中へ、ざらりと砂を噛んだような味が広がった。
「1度や2度なら偶然かもしれないけど、3度となると……これは確定、って気がしない?」
もし、もし2人が本当に付き合っていて。
事情があって周りに秘密にしているだけだとしたら……
ジワリ、と嫌な汗が滲む。
まさか私、副社長に浮気させてしまったってこと?
キララみたいに?
――まぁそういうことだから。ごめん、もう別れてほしい。
――ごめんね、お姉ちゃんっ! 彰さんを責めないで。全部キララが悪いのっ!
胸の上に重石が乗ったみたいな息苦しさを感じて、呼吸が乱れていく。
どうしよう、どうしよう……
「んん? なんかさ……副社長、こっち睨んでない? 僕何かやらかしたっけ……って、え、山内さん大丈夫っ? 顔色良くないよ」
「いえ、あの……平気です。私、もう戻りますね」
軽いパニックに陥っていた私は、ろくに岡田さんの言葉も聞かないまま、逃げるようにその場を後にした。