ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「…………」
さっきの会話、聞いてたか?
なぁ聞いてたか?

こっちの希望を100パー無視して平然と話しかけてくる男に毒気を抜かれたのか、怒りのボルテージが振り切れたのか、一周回ってなんとなく冷静さが戻ってくる。言っても無駄だと、まぁ経験上わかってるしな。

吐息をつくと、オレは半ば投げやりに話し始めた。

「お前に頼まれて、中条瑠衣をシェルリーズに送り届けたあの夜――」


切羽詰まったような彼女の目を覚えてる。
一夜の遊び相手を、あんな目で見るだろうか?
何か理由があるんじゃないか?

そして理由があるなら、近いうちに何らかのアクションを起こしてくるだろうと思った。まずあの夜の女は自分だと明かしてから、金の要求か、さらなる関係の強要か――

ところが、だ。
ゴールデンウィークが終わっても、何も起こらない。

彼女は今まで通り勤務をこなしてるし、オレへの接し方も今まで通りだ。
ごくごく普通ににこやかに挨拶し、仕事も完璧にこなす。“あの夜の女”なんか存在しなかったみたいに。

いやいやいや、絶対に何かあるだろう。

なんで何も言ってこないんだよ?
特大級の文冬砲でもぶっ放すつもりか?

時間が経つにつれ、段々オレは焦れてきた。

本当に、あの一晩きりのつもりだったんだろうか。

まさかとは思うが……このオレが遊ばれた?
おいおい、まさかだろう?
バージンだった彼女に、そんなことができるものか。

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