雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「連れ込んでなんかいません! 成瀬君が勝手に入って来たんです!」

感情的に叫んだ。

悔しさがどんどん込み上がってくる。

「そもそも課長がいけないんですよ! 楽しんでおいでとか言っちゃって。私は十年ぶりに会った元彼となんかバーに行きたくなかったんです。でも、課長が私の事を邪魔そうにするから、行った方がいいと思ったんです。それなのに連れ込んだとかって酷い。私、簡単に男を連れ込むような女じゃありません! 男性経験だって一人しかありません! 尻軽女みたいな言い方しないで下さい! それにいい加減な気持ちの訳ないでしょ! 映画のフィルムを見つけられなかったら、久保田とセットで札幌に飛ばされるって脅されてるんですよ!」

「札幌に飛ばされる?」

雨宮課長が眉を顰めて心配そうな顔をする。

しまった。

つい感情的になって余計な事を口走った。

「なんでそんな大事な事を黙っていたんだ」
「私がどうなろうと課長には関係ないでしょ! そうやって心配するのやめて下さい! 私の事は……もう、ほっといて……」

はらりと涙が零れた。

雨宮課長を目の前にするといつも弱くなる。
映画館で課長にハンカチを借りてから、私のペースは崩れまくっている。

もう、感情に振り回されるのはイヤだ。

こんなの私じゃない。
< 126 / 373 >

この作品をシェア

pagetop