雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
宣伝部復帰の日。

拓海さんと庶務係のみんなに見送られて10階の宣伝部のオフィスに行った。

久保田を始め、宣伝部の社員たちが忙しそうに動き回っている。
壁には昨年ウエストシネマズで手掛けた映画のポスターがずらりと貼られ、私が最後に手掛けた「ラストヒロイン」のポスターを見つけて嬉しくなる。

今年はどんな映画と出会えるだろうか。
来月はベルリン国際映画祭がある。私も連れて行ってもらえるだろうか。阿久津に交渉してみるか。

いや、その前に拓海さんの「フラワームーンの願い」だ。やっぱりノスタルジックな雰囲気の映画館で公開するのがいいかな。

シネマコンプレックス型の映画館ではなく、新橋にある、あの名画座で公開するのはどうだろう? 仙台の藤原さんのポールスターでも公開してもらおうか。

宣伝はどんな風に展開していこうか? どういう世代の人たちに見てもらおうか?

考えただけでわくわくする。
まずは権利関係の契約書を作らなきゃ。

それから……。

「中島さん」

久保田がこっちに来る。

「おかえりなさい」
「うん、ただいま」

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